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桐の話(ニ)

−名前の由来について−



−桐博だよりVol.3(平成7年4月1日発行)より抜粋−


福島県立博物館 教育普及係長 松田隆嗣


植物あるいは動物は、和名、地方名、学名、英名などいろいろな名前を持っている。 これらの名前にはそれぞれ、その名前についての伝説や由来がある。 キリについて言えば、和名がキリ、学名はPaulownia Tomentosa Steudel, 英名ではPaulownia などである。
 和名の由来については、知っている方も多いが、この木は切るとその木の生長がはやいことからキリと名付けられたということによることが広く信じられている。 これは、寛永五年(1708年)に出版された大和本草に、「此木切レハ早ク長ス故ニキリト云桐ノ類多シ梧桐ハ青ギリ白桐ハツネノ桐ナリ」とあり、この説が広く受け入れられていることに由来している。
 しかし、もし、この説が正しいとするならば、キリという木の栽培が、かなり古くから行われていたことになる。 つまり、キリに関する記録の最も古いものは、前号で紹介した本草和名(918年頃)に 利乃 (キリノキ)と記載されており、この辞典ですでにキリという木の性質をよく理解し、そ の特性を生かした栽培あるいは半栽培を行っていたと推測される。
 実際のキリ栽培については、この木を切ったほうが良いとする地域と切るべきでないとする地域があり、さらに問題は複雑となる。「きり」と言う木には、 様々なきりがあるためいろいろな混同が起こっている可能性もある。キリの名の由来については、再度検討する必要があるかもしれない。
 キリを漢字で書くと「桐」であることは周知のことであるが、漢字の由来については字の成り立ちから考える必要がある。 漢字の成り立ちは、象形文字、指事文字、会意文字、形声文字、仮借文字、転注文字の六つの告字法がある。 詳しくは専門書に譲るとして、桐の字は、木編に同という旁がいたものであり、会意兼形声文字にあたる。 形声文字というのは、その文字の一部に発音を示す音符(あるいは声符)を含んだ文字のことをいい、桐の場合、旁の同(ドウ)がこれに当る。 同という字は、四角い板を表す 印のなかに丸い穴をあけて突き通したのを示し、筒抜けにしたことを表している。
 桐という字は、キリの木の幹の姿に着目して命名したものと考えられている。つまり、キリの木の幹は、筒のように真っ直ぐに伸びる姿をしていることによる。 又、洞、胴も同じように筒抜けといったことによる文字である。
 会意文字は、既成の漢字をいくつか組み合わせたものであり、その組み合わせている漢字はどれも意味を表している意符である。この例としては、比、好、林などがある。
 学名は Paulownia Tomentosa Steudel であるが属名の Paulownia はシーボルトが後援を受けたオランダの Anna Paulownia 女王(1795から1865) を記念したものである。 種名の Tomentosa は、密に細綿毛のあるという意味であり、葉の全面に粘りけのある毛が密生することに由来する。 Steudel は人名。

 大和本草 此木切レハ早ク長ス故ニキリト云桐ノ類多シ梧桐ハ青ギリ白桐ハツネノ桐ナリ 

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